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『ミクと時のひなた』 舞台探訪 その6 

2018, 05. 31 (Thu) 22:25



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―――札幌市資料館(旧札幌控訴院)


舞台探訪、その6は札幌控訴院です。現在は札幌資料館として使われており、煉瓦造りの往時の姿をとどめています。建築は1926年。外観も内装も立派で、瀟洒で端正な大正モダニズムの香りが漂う重厚な建物です。

現実世界で再会したひなたと探偵が、ひなたの父・御形陽介の過去を紐解いていく際にふたりが語り合う場所・・・いわば推理小説で言う「種明かしの舞台」として、どこかよい場所はないか、と考えたとき、この場所が思い浮かびました。やっぱり物語の締めですし、印象的な舞台を用意してあげたいですしね。位置的には大通公園の端にあり、(反対の位置にテレビ塔がある)正面に立つとちょうど札幌の街の中心部を眺めることができます。

じつはこの場所、子どもの頃に一度見学に訪れて以来、ずっと忘れていた建物だったのですが、数年前、ネット上のとある記事でこの地を思い出すことになりました。それは能年玲奈さんことのんさんが、なにかのお仕事で札幌を訪れたときのもので、いくつかある訪問先を訪ねた撮影ショットの中に、この札幌控訴院で撮影されたお写真があったんですよね。確か、回り階段とステンドグラスを背景にしたお写真だったはずですが、それがとても綺麗で、そのときふっと懐かしい記憶が蘇ったというわけです。

記事を見つけました。こちらです。
https://colocal.jp/topics/art-design-architecture/siaftrip/20170703_98962.html



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控訴院というのは高等裁判所のことで、中に足を踏み入れるといかにも法を司る施設らしく、様々な機能が集約された建物となっています。正面玄関の上部には、目隠しをしたギリシャ神話の法の女神・テミス像がありますが、これは公平で厳正な裁判の精神と法の下での平等を示しているそうです。


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現在は資料館となっていますので、展示室や休憩所、喫茶スペースなど施設利用者・見学者に配慮された造りになっていますが、廊下や天井などはその当時のままで、いわゆる明治・大正の頃に造られた西洋建築物に目がないぼくみたいな人間にとっては、(特に二階)まさに眺めているだけで至福の空間となっています。


館内にいる職員の方に聞いたところでは当時政府は財政難で、予算緊縮からこれでも当初の建築案よりはずいぶん室内装飾をシンプルにせざるを得なかったということですが、それでも官製の建造物特有のどっしりした重厚さと、大正期の当時最先端のどこか柔らかなデザイン性が合わさって、建物全体に不思議な「居心地の良さ」が醸し出されている感じがします。ぼくが話をしたのはもう年配の学芸員のおじいさんでしたが、この控訴院の重要な建材のひとつである軟石について、熱く語ってくれました。ぼくとしては小説の書く際の資料というか、このシーンを描くときの大まかな雰囲気さえつかめればいいわけで、それ以上のまとまった知識は必要なわけではなかったのですが、そんなことは言い出せないほどこの方は熱心に札幌の歴史や戦時の状況について自分の体験も交えて語ってくれました。このところこうした年齢の方と話す機会が多く、いろいろ面白いお話を伺えるのでほんとうに楽しいですね。まさに言葉全体が宝の山、というか。



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結果的にこのシーンは、作品的にもとてもエモーショナルな一幕というか、ひなたが自分の抱いていた想いをいっぱいに解放させる良い場面になったかと思います。これも事前に取材に行き、この場所や土地に対してしみじみとした実感を持つことができたからかなあ、と今となっては思っています。繁華街から足を伸ばすにはちょっと距離のある場所ですが、もし機会があれば是非この札幌控訴院を訪ね、大正時代の豊かな雰囲気を感じてみてください。




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