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『孤狼の血』 

2018, 11. 27 (Tue) 18:30


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健さんや鶴田浩二、若山先生のファンであるぼくはもとからやくざ映画は大好きでしたが、ともすれば「邦画は過去作品があればそれでOK」みたいな感じになりがちでした。そんな怠惰な性根に往復ビンタ級の活を入れてくれたのが、先日見た白石和彌監督の『孤狼の血』です。役所広司さん目当てに何の気なしに観た映画でしたが、その圧倒的なパワーの前に冒頭30秒でもう目は釘付けになっていました。ストーリーとしては典型的な任侠映画からやや時代の下がった東映映画の実録路線というか、社会的リアリズムを重視した「仁義なき戦い」系、というかもろそうした系譜の映画なのですが、過去のそうした作品に熱い愛情とリスペクトを捧げながらも、この時代に新しい物を生み出そうという作り手・演じ手の熱気と活力が全編にみなぎっており、本当に素晴らしい作品となっています。特に役所広司扮するベテラン刑事、大上とコンビを組む若手刑事を演じる松坂桃李が本当に素晴らしく、物語を力強く牽引する大きな役割を果たしています。舞台は暴力団対策法成立前の昭和の終わりということですから、時代的にはそれほど前ではないのですが、それだけにともすればアバウトになりがちな時代考証や美術・舞台設定も完璧で、「ああ、こんな感じだったなあ」と観ているだけで記憶の隅をくすぐられると同時に、ふっと我に返ると作品世界に没入していたりするほど、往事の広島の町並みがそのままの姿でスクリーンに映し出されています。(ぼくは広島に住んでいたことはないのですが)

脇を固める俳優陣も素晴らしく、みんな力の入ったアウトローっぷりをのびのびと(そしてきっと楽しみながら)演じ、それぞれに個性的な輝きを見せてくれています。余談ですが、やくざの一人を観ていて「この人NACCSの音尾さんに似てるなあ」と思ってキャストクレジットを観てみると、やっぱり音尾さんでした(笑)。素晴らしい演技に惚れ惚れしてしまいました。あの酷い目に遭うところとか。

ただ、万人にお勧めの映画とはお世辞にも言えないハードな映画であることもたしかで、ひょっとしたら人を選ぶ作品であるかもしれませんが、あの邦画が荒々しく活気に満ちていた時代を思い起こさせる力作であることは間違いありません。最近の邦画はすごくいい感じだと個人的に思っていますし、今後もこうした作品がたくさん観られることを願ってやみません。『孤狼の血』、最高です。


『三度目の殺人』 

2018, 10. 20 (Sat) 22:32



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是枝裕和監督の『三度目の殺人』を観ました。福山さんと役所広司さん目当てに観たのですが、広瀬すずさんが可愛くて凄くて夢中になってしまいました。いや、達者な女優さんだったんですね。びっくりしました。映画としては所謂「法廷サスペンス」だと思うのですが、この手の映画が大好物のぼくとしては文句なく楽しめました。ぼくは淡々としていながら気の抜けたような画は一瞬たりともフィルムに残さない是枝監督の「穏やかなテンション」がとても好きなのですが、今作もまた全編にその空気感がみなぎっており、見慣れた日本の風景がどこか異国のそれのように感じられました。外国人の目で日本の風景を見ているような不思議な体験って、まさに映画ならではの体験ですよね。

そしてあの冒頭のシーン。弁護士事務所の室内とあの窓辺が映った時点で、もうこの映画は傑作にちがいないと確信しました。福山さんの、「足で稼ぐ」往年の探偵もののような雰囲気もまた素晴らしく、冬の北海道へ調査の足を伸ばしていくところもどこか松本清張のミステリを見ているみたいで心地よかったですね。たぶん「画の見たさ」にあと何度も見返すことになると予感させられる、そんな素敵な映画でした。オススメです。

男の横顔 

2018, 09. 28 (Fri) 21:30

鶴田浩二さんの『博奕打ち』シリーズを見ています。健さんとはまたひと味違う魅力があって素敵ですね。健さんはドラマの展開上、耐えたり虐げられたりしていても、どこかからりとした陽性の明るさを感じますが、鶴田浩二さんのその横顔にはどこか沈々とした内面が滲み出ているようで、一挙手一投足に重みがあり、観る者を容易にひとつの感情へ導かない強度と粘りがあります。この重みこそが長年熱狂的なファンを獲得している要因だと思うのですが、本当、観るその都度にいろんな再発見がある素晴らしい役者さんだと思います。あと、声が好きですね。うっとりします。必ず脇で出てくる大木実さんも大好きですし、楽しい映画です。

期待の新作 

2018, 08. 31 (Fri) 23:12

デンゼル・ワシントン主演『イコライザー2』がもうすぐ公開です。(といっても10月ですが)これは楽しみです! YouTubeに予告編がアップされていますが、期待感マックスでいまからわくわくが止まりません。思えばこうしてわくわく出来る作品があるというのはありがたいことですよね。いったい今度は彼がどんな悪党をぶちのめし、胸がすくような活躍をしてくれるのか、刮目して待ちたいと思います。

『地獄の黙示録』 

2018, 08. 24 (Fri) 22:20


久しぶりに「地獄の黙示録」を観ました。見返すのはほんとうに久しぶりです。「地獄の黙示録」ってなんだか無性に観たくなるときがあって、で、観ると「ああ。こうだったなあ」とか「そうだ。こっからが長いんだよなあ」など記憶が蘇ってきて、だらだら話の筋を追いつつ(もし話の筋があればの話ですが)最後はぐったりとして見終える、というのがお定まりのパターンとなっています。でも変な中毒性があるんですよね。

この当時のコッポラは映画監督として完全に自我が肥大しており、生来の芸術家気質と相まって超大作路線に舵を切りつつ、作品をコントロールするすべを失っているという非常に困った状況におりました。この作品もシナリオはもっと活劇エンターテインメント路線の映画だったらしいのですが、もろもろの事情であえなく断念、結果、コンラッドの「闇の奥」文芸路線をひた走り、よくわかんない映像とラストに至る・・・というのがまあいわゆるひとつの映画史的な定説となっています。しかし改めて見返すと、画面の至る所に妙に「テンションの高い倦怠感」とでも言うような不思議なトーンが宿っており、観る者を不思議な気分へと誘ってくれます。

それが企図されたものなのか、偶然さえ味方に付けた監督の狙いだったのかは定かではありませんが、ベトナム戦争ものと言えばこの「地獄の黙示録」と言われるくらい、ぼくらにとってはあるべき古典教養ですし、しかもそれでいながら機関銃ぶっ放しのわくわく戦場エンターテインメントでもあるこの作品、やはり定期的に観ずにはいられない、心のふるさとの一本だと改めて感じた一日でした。