ホラーな季節 

2018, 04. 18 (Wed) 20:30


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久しぶりにまたにホラー映画をみたい気分になってきました。どうもこの気分にはブームというか変な周期があるらしく、定期的に無性に怖い映画を観たくなる時期が来るんですよね。ふだんはすごく怖がりなのですが。

観る映画は別に何でもよく、そのときの最新作でも流行の映画でも何でもかまわないのですが、やはりホラー映画の「文法」や「文脈」を押さえているというか、作り手がきちんと「わかっている」作品が好きですね。作り手の映画愛が画面から溢れているような作品は観ているだけで幸せな気分になります。ホラーなシーンを観て幸せになるとはまた妙な話ですが、こればっかりは脳の中で感情を処理する部分が違うのか、驚いたり怖がったりすることと、作品を「読み」、鑑賞することは並列して処理することが可能なのかもしれません。映画好きなら程度の差こそあれ、次第にそうなっていくのでしょうが・・・因果な性分ですよね。

といっても、血がどばーっと出るようないわゆるスプラッターな映画はちょっと苦手なので、ほどよい感じで心臓がドキドキするようなそんな映画が観たいですね。深夜、布団に半分隠れながら観るホラーは格別(?)です。

大杉漣さん 

2018, 02. 22 (Thu) 21:30


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大杉漣さんが亡くなりました。ぼくも一映画ファンとして、大杉漣さんが出演している映画をいつも楽しんで参りましたので、とても残念な気持ちでいっぱいです。まだお若かったし、これからもいろんな作品で観られるものとばかり思っていました・・・。その可能性が不意に閉じられてしまった今、本来もっと豊かに華開くべきだった邦画のひとつの輝きが消えてしまったような、そこにあるべき光が突然失せてしまったような、そんな心許ない気分でいます。

大杉漣さんと言えば言うまでもなく北野映画の常連で、「ソナチネ」「HANA-BI」「BROTHER」など過去の名作に多数登場しています。ぼくはいいだけ北野映画信者なので、もうこの辺の作品は好きすぎてもはや客観的には観られないくらいなのですが、そのどの作品でも大杉さんは画面内にその存在を静かに放ちながら、その不思議なたたずまい(ちょっと哀しげで、それでいて圧倒的にマテリアルな)でスクリーンに独特の空気感を形作っています。ぼくはこの大杉さんが漂わせる「中年男の哀しみ」のような匂いが好きで、彼の映画が掛かる都度、それを求めて画面に見入っていたような気がします。人生そのものを表していると言っていいその「顔」……すり切れ、疲れ、でもぎりぎりのところでなんとか踏み止まっているかに思えるその姿は、主に社会のアウトサイダーに強いシンパシーを抱く北野武監督の下、主に暴力組織の中に生きる人間を演じるとき、一際輝いていたように思います。ぼくはこのところ東映のやくざ映画をずっと観返していましたが、それを観ると、北野監督が撮るやくざ映画がどれだけスタティックで抑制された静謐さに満ちているか、そして大杉さんのたたずまいが(背が高くてかっこいいんですよね)それを支えているかに気づかされました。同僚、友人、義兄弟……。大杉さんは大抵役者・北野武の横にひかえ、特別な絆で結ばれた人物を演じ続けてきました。まあだいたいは作中でピストルで撃たれたり、殺されたり、腹切ったりと酷い目に遭うのですが、その物言わぬ寡黙な二人が少し視線を落とし、同じフレームに収まっているシーンは、言葉などいらない男同士の友情を感じさせ(これもかっこいい!)、しみじみとした余韻を観る側に与えてくれました。

そしてもうひとつの側面、大杉漣さんはサッカーファン、Jリーグファンの間では熱心なサポーターとしても知られていました。サッカー全般に深い造詣と愛情を持ち、地元・徳島ヴォルティスの熱いサポーターとして日頃からスタジアムに足を運び、応援してらっしゃる姿はしばしば目撃され、お忙しいであろう時間を縫って観戦されるその様子に、我々はサッカー好きの端くれとして畏敬の念と、そして(一方的に)親しみを感じておりました。それもあくまで一サポーターとしての姿勢を崩さず、人知れず―――もちろん素敵な人ですから目立ってしまうのですが―――こっそりスタンドの端で応援しておられるご様子からはその控えめなお人柄が伺えるような気がしたものです。奇しくも明日2018シーズンのJリーグがいよいよ開幕するわけで、それを思うと返す返す残念な気持ちでいっぱいです。

本当に好きな役者さんでした。ご冥福をお祈り致します。




『裏窓』 

2018, 02. 15 (Thu) 21:30


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ヒッチコックの『裏窓』を観ました。もう何度観たかわからないくらいの作品ですが、やはりいい映画というのは何度観ても面白いですね。足を骨折したカメラマンの独居であるマンションの一室、そこの窓から見渡せる眺めと視点のみでサスペンスを構成するという、あまりにも有名なシチュエーションのこの映画は、のちにいろんな形でリメイクされ、多くの映画に影響を与えました。もちろんぼくも学生時代から大好きな作品ですが、今回見直して改めて感じ入るのはグレース・ケリーのあまりの可愛らしさです。のちにモナコ公国の公妃になる女優さんですから、その神々しいまでの美しさは今更言うまでもありませんが、この『裏窓』におけるグレース・ケリーのたたずまいは尋常ではありません。なによりその素敵なファッション。

映画内の役柄としては、どちらかと言えばおきゃんな女の子というか、活動的で好奇心旺盛、すぐにわくわくしたがりなキュートでかわいい女性を演じています。主人公であるジェームズ・ステュアートに対するアプローチも積極的で、どちらかと言えばジェームズ・スチュアートはぐいぐい攻めてくる彼女を前に防戦一方……どころか、最後は(べつに彼女のせいではないとはいえ)ひどい目に遭ってしまいます。映画や演劇などでこうして男を虜にし、結果的に破滅に導く魅力的な女性のことをファム・ファタールと言いますが、ヒッチコックはこうした魅力的な女性を数多く登場させています。グレース・ケリーはファム・ファタールと呼ぶにはあまりに陽性というか、華やか&美しさパワーが強すぎるようですが、ストーリーをぐいぐい牽引して、作品を有無を言わせず楽しいエンターテインメントに仕立ててしまう破天荒な存在感に満ちています。男性なら、あんなきれいな女性に攻められたら誰だって参ってしまいます。

怪我をしているが故に動けない、というこの制約が単に犯罪やサスペンスへの導入だけでなく、男女間のラブロマンスへの誘いにもなっているというこの映画、観る側もなかなか一筋縄ではいかないようです。楽しい映画です。


表現 

2018, 02. 07 (Wed) 18:30



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先日、『男はつらいよ』を観ていたら、寅さんの台詞で「秋の陽はつるべ落としよ」というものがありました。旅先から柴又へ戻ってきた寅さんが、おいちゃんやおばちゃん、妹のさくらといったとらやの面々を前に旅の道中での情景について語るというおなじみのシーンですが、しみじみとくるいい台詞ですね。紅に染まった雲が棚引く秋の夕暮れの情景が目の前に浮かぶというか、話し手である寅さんの語り口と相まって、胸にすっと染みこんでくるような表現力に思わずじんときてしまいました。こうした表現をいつか小説の中で使えるようになりたいなあと思いますが、同時に今の時代ではやや物言いが古風で(言葉としてとても美しいのですが)、そのまま使うとかえって他の文から浮き上がってしまうかもしれず、やはりこれは寅さん・・・渥美清さんのような人物しか使いこなせないのかもしれません。

いささか年齢を重ねたせいでしょうか。他にも改めて観るとしみじみ胸に迫ってくるシーンがたくさんあり、「寅さん」はやっぱり面白いなあと思いますね。ちなみにぼくが寅さんの中で好きなのは太地喜和子さんがヒロインの第17作・『寅次郎夕焼け小焼け』です。何度観ても泣けます。

邦画づくし 

2018, 02. 02 (Fri) 22:30


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邦画ばかり見るようになってずいぶん経ちます。改めてじっくり見てみて思うのは、自分が見逃してきたいい映画ってたくさんあるんだな、ということ。わかってはいたのですが、いわゆる有名な名作・大作(黒沢・小津・溝口・成瀬)を見るのにいっぱいいっぱいで、70年~80年代の映画に関してはなかなか手が回らないでいました。Amazonプライムのおかげもあって、そのへんの映画を気軽に見られるようになり、そこからまた関連する他の作品に興味が向かったりと、ツリー状に見たい映画、見るべき映画が広がっていっている感じです。かつてはタイトルをひかえた紙を持ってビデオレンタル店に通ったり、DVDを買ったりと一つの映画を見るのにずいぶん時間がかかったものでしたが、今では本当に便利に、そして映画が身近なものになったなあとしみじみ思いますね。まあおかげで泥沼に嵌まっているわけですが、頭から飛び込んでみなければわからない世界もありますしね。しばらくはこのペースを続けていこうと思います。いやあ、邦画って本当にいいものですね。(淀川さん調で)