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『飢餓海峡』 

2018, 08. 08 (Wed) 21:41


映画『飢餓海峡』を観る。凄い作品だとわかってはいましたが、やはり見応えのある映画でずしりと腹持ちのする三時間でした。水上勉さんの推理小説が原作だけに観る者をグリップする力が半端ないですね。三国連太郎さんが罪を犯した犯人を演じているのですが、いつの間にか彼に感情移入してしまっていて、刑事役の高倉健さんが憎たらしく思えるほどでした。でも体制側にいる健さんって、なんか変な感じですね。健さんはやはり狩る側よりも狩られる側、追い詰められる反体制側の人間でいたときの方が生き生きとしている気がします。にしてもいつの間にかこういう映画をしみじみといいと思える年齢にいつの間にかなっていたんですね。もっといろんな作品が観たいなあ。

『安珍と清姫』 

2018, 08. 02 (Thu) 22:25


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市川雷蔵主演、『安珍と清姫』を観ました。前から観たいと思っていた映画だったけれど、やっと観られました。いやあほんとうに面白かったです。監督は島耕二。清姫役を若尾文子が演じており、もの凄いエロチックな清姫を体を張って演じていました。原作は能や歌舞伎の演目として有名なお話ですけれど、ぼくも通り一遍の知識を持っているだけで、こんなに凄いお話とは思ってもいませんでした。煩悩と信仰の狭間で激しく苦悩する若い修行僧を市川雷蔵が演じていますが、苦悩の表情と言えば雷蔵が最も得意とするところ、ストイックで生真面目な安珍を格調高く演じており、観る者を話の筋にぐいぐいと引き込んでくれます。その安珍を誘惑し、女の情念をありったけ燃やし尽くす清姫。恋情のあまり最後には大蛇にまでなってしまうその業は、若尾文子の美しさと存在感なしでは到底描ききれなかったでしょう。大映の持つ底力を改めて感じた一作でした。いやー、凄い映画ってまだまだいくらでもあるものですね。

なつかしの『ヤングガン』 

2018, 06. 24 (Sun) 22:30


なんとなく西部劇を見たくなり、『ヤングガン』を観ました。初見の時から大好きな映画で、若者の群像劇として疾走感のあるストーリーがとても印象に残っています。当時キーファー・サザーランドが好きだったなあ。今見ても、その瑞々しさは少しも損なわれていませんね。ビリー・ザ・キッド関連の映画ではこれが一番好きかも。ただ続編の『ヤングガン2』って今見たらブルーレイ化されていなくて、とんでもないお宝値がついているんですね。若山先生の『極道』シリーズもそうですが、いい作品はリマスター化、製品化をどんどん進めて、「眠れる傑作」扱いが早々になくなってくれることを希望します。誰の得にもなりませんし、第一もったいないですものね。

ホラーな季節 

2018, 04. 18 (Wed) 20:30


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久しぶりにまたにホラー映画をみたい気分になってきました。どうもこの気分にはブームというか変な周期があるらしく、定期的に無性に怖い映画を観たくなる時期が来るんですよね。ふだんはすごく怖がりなのですが。

観る映画は別に何でもよく、そのときの最新作でも流行の映画でも何でもかまわないのですが、やはりホラー映画の「文法」や「文脈」を押さえているというか、作り手がきちんと「わかっている」作品が好きですね。作り手の映画愛が画面から溢れているような作品は観ているだけで幸せな気分になります。ホラーなシーンを観て幸せになるとはまた妙な話ですが、こればっかりは脳の中で感情を処理する部分が違うのか、驚いたり怖がったりすることと、作品を「読み」、鑑賞することは並列して処理することが可能なのかもしれません。映画好きなら程度の差こそあれ、次第にそうなっていくのでしょうが・・・因果な性分ですよね。

といっても、血がどばーっと出るようないわゆるスプラッターな映画はちょっと苦手なので、ほどよい感じで心臓がドキドキするようなそんな映画が観たいですね。深夜、布団に半分隠れながら観るホラーは格別(?)です。

大杉漣さん 

2018, 02. 22 (Thu) 21:30


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大杉漣さんが亡くなりました。ぼくも一映画ファンとして、大杉漣さんが出演している映画をいつも楽しんで参りましたので、とても残念な気持ちでいっぱいです。まだお若かったし、これからもいろんな作品で観られるものとばかり思っていました・・・。その可能性が不意に閉じられてしまった今、本来もっと豊かに華開くべきだった邦画のひとつの輝きが消えてしまったような、そこにあるべき光が突然失せてしまったような、そんな心許ない気分でいます。

大杉漣さんと言えば言うまでもなく北野映画の常連で、「ソナチネ」「HANA-BI」「BROTHER」など過去の名作に多数登場しています。ぼくはいいだけ北野映画信者なので、もうこの辺の作品は好きすぎてもはや客観的には観られないくらいなのですが、そのどの作品でも大杉さんは画面内にその存在を静かに放ちながら、その不思議なたたずまい(ちょっと哀しげで、それでいて圧倒的にマテリアルな)でスクリーンに独特の空気感を形作っています。ぼくはこの大杉さんが漂わせる「中年男の哀しみ」のような匂いが好きで、彼の映画が掛かる都度、それを求めて画面に見入っていたような気がします。人生そのものを表していると言っていいその「顔」……すり切れ、疲れ、でもぎりぎりのところでなんとか踏み止まっているかに思えるその姿は、主に社会のアウトサイダーに強いシンパシーを抱く北野武監督の下、主に暴力組織の中に生きる人間を演じるとき、一際輝いていたように思います。ぼくはこのところ東映のやくざ映画をずっと観返していましたが、それを観ると、北野監督が撮るやくざ映画がどれだけスタティックで抑制された静謐さに満ちているか、そして大杉さんのたたずまいが(背が高くてかっこいいんですよね)それを支えているかに気づかされました。同僚、友人、義兄弟……。大杉さんは大抵役者・北野武の横にひかえ、特別な絆で結ばれた人物を演じ続けてきました。まあだいたいは作中でピストルで撃たれたり、殺されたり、腹切ったりと酷い目に遭うのですが、その物言わぬ寡黙な二人が少し視線を落とし、同じフレームに収まっているシーンは、言葉などいらない男同士の友情を感じさせ(これもかっこいい!)、しみじみとした余韻を観る側に与えてくれました。

そしてもうひとつの側面、大杉漣さんはサッカーファン、Jリーグファンの間では熱心なサポーターとしても知られていました。サッカー全般に深い造詣と愛情を持ち、地元・徳島ヴォルティスの熱いサポーターとして日頃からスタジアムに足を運び、応援してらっしゃる姿はしばしば目撃され、お忙しいであろう時間を縫って観戦されるその様子に、我々はサッカー好きの端くれとして畏敬の念と、そして(一方的に)親しみを感じておりました。それもあくまで一サポーターとしての姿勢を崩さず、人知れず―――もちろん素敵な人ですから目立ってしまうのですが―――こっそりスタンドの端で応援しておられるご様子からはその控えめなお人柄が伺えるような気がしたものです。奇しくも明日2018シーズンのJリーグがいよいよ開幕するわけで、それを思うと返す返す残念な気持ちでいっぱいです。

本当に好きな役者さんでした。ご冥福をお祈り致します。