『サイキック』を書き終えて 

2017, 01. 07 (Sat) 00:30

この『さよなら、サイキック』という作品はぼくにとってもいろいろ思い出のつまった作品です。

昨年末に書き上げた直後はうれしさと、なにより安堵の気持ちでいっぱいでしたけれど(なにせ締め切りがきびしかったものですから)、新年をまたぎ、今少し冷静になってあらためて振り返って見ると、ぼくのキャリアの中でもかなりプライベートな色彩の多い作品になっていると思います。書いている当人としては、もうちょっとエンターテインメント的な方向に寄りたかったのですが、作品自体が内包しているテーマにぐいぐい引っぱられるように最後はああした結末になりました。もっともすでにご説明したように、元々この作品は「超能力少年の一人称語り」というスタイルの短編からスタートしているので、こうした流れになるのはある意味必然だったのかもしれません。瑕疵の多い作品ですが、もし読者の皆様に気に入っていただけたら作者としてこれに勝る喜びはありません。

さて今後ですが、年頭のご挨拶でも申し上げたように、まったく新しい作品に取り組んでいきたいと思います。自分としてもここ数年、物書きとして少し狭いところ狭いところに行っていたなという思いがありますので(いや、こういうキャラクターの内面に焦点を当てた作品も大好きですし、こっち方面にも素晴らしく豊かな世界が広がっていると思うのですが)次はもっと開かれた、ダイナミックな方向に創作の舵を切りたいと思っています。

人間、年齢と共にだんだん肩の力が抜けてくると言いますが、ぼくも年々リラックスし、とうとうこうしてブログを書けるくらいにまで成長(?)しました。(おめーはもうちょっとしゃきっとしろと言われそうですが)その意味でも、もう少しくつろいだ感じで書くという行為と向き合えるような気がしています。これも年の功かなあ。

まあ、今後もぼくらしくこつこつやっていきたいと思っておりますが(ぼくは書くことに関しては一貫して真面目なんです)、なにか思いついたり、お知らせがありましたら、その都度またこちらでちょくちょく話させていただきますのでよろしくお願いします!

キャラクターあれこれ・蒔田ヒルガオとゲオルグ・カヴァルカンティ編 

2017, 01. 06 (Fri) 00:30

キャラクターあれこれ、三日目はファング使いの元・超能力者、蒔田ヒルガオとゲオルグ・カヴァルカンティ、通称じいちゃんです。

第二巻に「かつて超能力を持っていた女の子」を登場させようと思ったとき、当然そのキャラクター像をどのようなものにするか考えました。そのキャラクターは、ログや軍乃の抱える悩みをすでに通過しており、そうである以上、必然的にその作劇中の役割は彼らを導き、手助けするようなポジションを務めることになります。しかしぼくは、いかにもすべてを心得え、彼らに助言を与えるような大人びたキャラを出したくありませんでした。―――こうして登場したのが蒔田ヒルガオです。

このちょっと不思議な名前のキャラクターは、以前ぼくが何の気なしにこしらえ、「いつか機会があるときに出そう」くらいに思っていたキャラクターでした。結果的に彼女はこの作品の重要な場面で、この役柄をきっちり果たしてくれました。実際、彼女がいてくれたおかげでこの作品の雰囲気は明るくより開かれたものになりました。その意味ではチヅル同様、ずいぶんと助けられたキャラクターですね。

欲を言えばもう少し活躍の場を与えてあげたかったですが、でもこれまでにいなかったタイプの女性キャラクターとして、なによりログ、ロンド、軍乃の三人を相手に一歩も引くことのない一極の雄として、この物語に「時間の流れ」というものをもたらしてくれたと思っています。ぼく自身、書いていてとても楽しかったです。

もうひとりはカヴァルカンティ老人です。これまでぼくの作品を読んでこられた読者の方は、ぼくがかなりの「じいちゃんキャラ」好きであることはご承知だと思います。実際、ぼくは『リンネ』の頃からお年寄りキャラクターを作中に出すのが好きで、そのむかし担当さんに怒られたこともあるくらいです。「清野さん、ライトノベルですよ。読者が読みたいと思っているのは若い子なんです!」と。(いやー、その節はご迷惑をおかけしました)たしかにおっしゃるとおりですし、そのアドバイスはもっともだとぼくも今となっては思います。ですがその一方で、書き手としては、子どもや青年、目の醒めるような美少女を描くのと同じくらい、お年寄りや老人を描くことも重要なことだと思うんですけどね。

さて、この隠れひょうきん者のじいちゃん導師ですが、これまた書いていてたのしい人物でしたね。役割としては必然的に方向性が限定されてしまうような「狭い」役柄にもかかわらず、そんなことお構いなしに好き放題に動いてくれました。(JJとか普通にナンパしてましたし)ロンドとも相性がいいようで、なんとなくその後の未来や展開が想像できるような、解釈の幅のある味わい深いキャラクターになってくれたと思います。機会があれば、またこうしたご年配のおじいちゃんを(そしておばあちゃんも)書いてみたいですね。

今作は、執筆を通してキャラクターというものは本当に生き物だとあらためて実感した作品でした。作者が感じたその実感の一端を、読者の皆様にも感じ取っていただければうれしく思います!

というわけで今回は、蒔田ヒルガオ&ゲオルグ・カヴァルカンティのキャラクター造形についてでした。

キャラクターあれこれ・木佐谷樹文哉編 

2017, 01. 05 (Thu) 00:30

前回に引き続き、新キャラクターのお話です。今日は軍乃の兄、木佐谷樹文哉です。

軍乃はログ、ロンドと並んでこの作品におけるメインキャラクターであり、物語の根幹に関わる大変重要な存在です。また複雑な内面を抱えた女の子でもあり、本編の中で軍乃の話がすすむにつれ彼女の物語をどのような形でストーリーに着地させるか、ぼくも様々に考えるようになりました。そんな折、担当編集者さんがぽつりと「軍乃のお兄さんを出す必要がありますね」とおっしゃいました。(その時点では会話の中に出てくるだけだった)その瞬間ぼくの中で腑に落ちるものがあり、なにより兄妹二人の関係がぱっと見えたような気がしました。こうして彼は作品内で重要な役割を担うこととなり、満を持して本編に登場することとなったわけです。

もっともその以前から一応キャラクター設定はできており、大まかな人物像も考えていましたので、キャラクター造形に関してはわりとスムーズでしたね。「あの軍乃におにいちゃんがいるとしたら、いったいどういう人だろう?」ということから考えた結果、軍乃のような輪郭のはっきりした女の子には、逆にふんわりした雰囲気の優しいお兄さんがいるにちがいないと思い、ああいった性格の青年になりました。書いている間はこの兄妹の間柄はとても面白く、楽しんで執筆することができました。二人のやりとりを書き進めるうちに、軍乃がどんどん年相応になっていったりして。

ぼくは男ですから男の子の気持ちはわかります。また長年子どもたちと身近に接する職業に携わってきたため、思春期以前の子どもたちが(男の子、女の子ともに)どういう存在なのか、どんなことを考えているのか、理屈をこえて肌身で実感してきた部分があります。ですが今回、物書きとしてはじめて「思春期」というテーマを扱うに際し、ぼくは執筆中なにかわからないことがあったら登場人物たちと一緒に考えていこうという選択肢を選びました。(そうじゃなきゃ書いていて面白くないと思ったからです)今でもその考えは変わっていませんが、そんな執筆作業のさなかにあって、彼―――軍乃のおにいさん、文哉は作中に登場する大人の男性として、ログら迷えるキャラクターたちを導く役割を果たしてくれた・・・そんな風に思っています。

超能力者の妹を持った一般人の兄。そんな役割を大きな過去を背負いながら淡々とやってのける彼こそ、実のところ、作品内でもっとも強い人物なのかもしれません。

というわけで今回は軍乃の兄、木佐谷樹文哉についてでした!

キャラクターあれこれ・朱音儀チヅル編 

2017, 01. 04 (Wed) 00:30

物書きが作品を作る楽しさのうち半分くらいはキャラクターを作る楽しさにありますが、まれにこちらの企図した以上にキャラクターが生命を持ち、動き出してくれることがあります。よく言われる「キャラクターが勝手に動き出す」という状態ですね。

もちろんこれは一長一短で、決していいことばかりではありません。キャラクターが魅力的になり、生き生きと活躍するのは良いことですが、その結果作品全体の構成が変わってしまったり、当初予定していた物語の結末が変化してしまっては元も子もありません。(古来名作と呼ばれる漫画などでは、そうした結末になってもなお作品の完成度が損なわれないどころか、一層素晴らしくなるという事例もありますが)理想としてはキャラクターが存分にその魅力を発揮しつつも、説話の流れは損なわることなく、あくまで書き手の側が厳正に作品をコントロールしている、という状態が望ましいのでしょうね。もっとも作り手としてはそのバランスに苦労し、知恵を絞るわけですが。

本作の二巻において、朱音儀チヅルという名のテレポート能力を持つキャラクターが登場しますが、彼女もまた作品中、こちらの企図せぬ大きな存在感を放ってくれたキャラクターでした。ちょっとヤンキーっぽい、ざっくりした性格の不良少女というのが最初に考えた設定でしたが、(実は読書好きの物静かな美少女というパターンも考えていた)役柄がはまったのか、それともログら主人公たちと相性が良かったのか、物語にたくさんの余慶をもたらしてくれました。ぼくは自身の作り上げたキャラクターにはあまり「えこひいき」をしないたちだと(自分では)思っているのですが、中でもチヅルは特に気に入っているキャラクターですね。

能力についてはとても便利なぶん、多少制限を加えなければなりませんでした。(なにせテレポーターですから)でも作者として手を加えたのはそれくらいで、あとはほとんど「地」のままというか、彼女が自由に動くのに任せました。本来ならチートキャラになる素質十分の彼女が、能力でではなく、人柄でチートになるという(?)荒技を見せてくれたのも、この女の子の性格故でしょう。でもそのおかげでこの物語にさまざまな綾や艶が生まれたことをうれしく思います。主人公たちもずいぶん助けられましたしね。(というか、さきほど余慶をもたらしてくれたと書きましたが、その意味で彼女がいたお陰で一番恩恵を被ったのは軍乃ですね。いやー、友達が出来て本当に良かった)

彼女は書いていてどこか懐かしい気持ちにさせられるキャラでした。自分の中にいない(というかこれまであまり積極的に書いてこなかった)キャラクターを書こうという挑戦は前作から試みていますが、チヅルはぼくにとっても未知の存在でありながら、不思議な既視感となつかしさを与えてくれるキャラクターでしたね。こうしたキャラクターと出会えたことをうれしく思います。

というわけで今回は新キャラクター、朱音儀チヅルについてのお話でした!

『さよなら、サイキック 0.夢と出会いの塔』 

2017, 01. 02 (Mon) 00:30

お正月、皆さんはどう過ごされていますでしょうか?

ぼくは十年ぶりくらいに地元でお正月を過ごしています。自宅でまったりと新年を迎えるということが久しくなかったため、なんだか凄く新鮮です。今日はとりあえず神社に初詣に行った後、お買い物をしてきましたが、こんなにのんびりしていて怒られないかな、みたいな感じです。でもこうして穏やかなお正月もいいものですね。皆さんはもう初詣に行かれましたか?

天皇杯決勝のお話はまた改めてするとしまして、本日はお知らせがひとつあります。すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、小説投稿サイト『カクヨム』にて、拙著『さよなら、サイキック』の前日譚、『さよなら、サイキック 0.夢と出会いの塔』という作品を公開させていただいています。小説をお読みになり、もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら読んで戴けたらうれしいです。
(リンク先はこちらです。)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882092780

この作品について少し説明させていただくと、これはもともと『重力青春ドリーマー』という名の200枚ほどの短編でした。ぼくが書いたログを主人公とした初めての作品であり、『さよなら、サイキック』の前身にあたります。ストーリーとしては本編の約一年前―――ログとロンドが偶然出会い、ロンドの病が明らかになり、やがてその病が恢復するまでを描いたお話です。書いた時期としては数年前でしょうか。ふと「超能力少年のお話を書いてみたいなあ」と思い立ち、一気に書き上げましたが、そのときはこの物語に続きがあるとは夢にも考えていませんでした。その後、『サイキック』をあらためて執筆するとなり、いわばログとロンドふたりの過去として眠っていたものを、今回大幅に改稿した後、スニーカー編集部さんのご協力をいただきこうして発表させていだくことになりました。

すでに書き上げてから時間が経過しているため、今になって読み返すと少し気恥ずかしい感じもしますし、ログのキャラクターが本編とは若干違っている部分もありますが、でもすごく懐かしいですね。当時の自分としては、「過去に問題を抱えていた自意識ばかりがとんがった年若い少年が(自分が既にそれを通過したと信じて)饒舌に己の過去を語る」という若書きの文体を狙って書いたつもりでした。(サリンジャーみたいな!)いささか拵えた語り口と読みやすさの間で文章が揺れている感じもありますが、本編の頃とはひと味違う、この暑苦しいまでに前のめりなログの体温を感じていただけたら幸いです。

なにより、こうして未発表だった作品を発表できて本当に嬉しいです。ぼく自身、前々からこの「カクヨム」をはじめとする小説投稿サイトには興味があったものですから、今回利用させていただけて楽しかったです。(サイトのフォーマットに合わせるのに、一回の文章の量を短く調節しなければならないのには苦労しましたが)また是非利用してみたいです。

この『サイキック』という作品は自分でも「若い」作品だと思います。今になって思い返すと、『時載りリンネ』の方が処女作にもかかわらずずっと老成した作品でしたね。(主人公達の年齢は若いのに不思議ですよね)きっと、それは今作の方がぼくにとって未知の風景を描いた作品だからだと思います。むろんぼくにとってはどちらも愛着のある作品ですが、こうしてその過渡期に記したこのエピソード0―――『夢と出会いの塔』という作品を皆さんに読んでいただけたら幸いです。